最初の事務所選びQ4.顧問税理士に求めるべき経験とは?年齢は何歳がベストですか?
A4.やはり“専門家としての経験”に加え、“経営者としての経験”を期待したいところです。
年齢よりも、実際にどのような経験をしているかを確認しましょう。
また、所長先生が素晴らしい経験をお持ちでも、所長先生が殆ど関与せず、緊急の場合でも相談できない体制では意味がありません。どのような体制であなたにサービスされるか確認しましょう。
お客様に喜んでいただけた場面とは?
これまでの私の経験の中で、真にお客様に喜んで頂くことができた場面というのは、単純に専門知識を持ち合わせていたという場面ではありません。
ひとつひとつのやりとりがお客様の経済的な利害に直結する厳しい税務調査の現場や、判断の材料となる基礎資料自体が十分に入手できないケースや基礎資料自体が矛盾している場面など、やはり“専門家として経験したからこそ判断できた局面”と、自分自身が、人を雇用し、育成し、評価を行い、給与を支払い、当事者としてサービスの代金を頂き、資金繰りを考え、連帯保証をして金融機関から融資を受け、設備投資を行い、サービスを開発してきたからこそ共有できるアドバイスができた“経営者としての経験が活きたケース”だったと思います。
顧問税理士が提供するサービスの中で、本当に重要なものは、実はこの“専門家としての経験”と“経営者としての経験”かもしれません。
『専門家としての経験』と『経営者としての経験』
私は、監査法人と税理士事務所での○年の実務経験を持って、○歳で独立開業しましたが、振り返れば、税金の専門知識の蓄積は、開業時には、数多い税金の分野(特に、法人と個人の儲けに関する税金(法人税、事業税、住民税、所得税など)の他、消費税や相続・贈与に関する税法などがあります。)について、現在の半分も知識はなかったかもしれません。
まして、“専門家としての経験”については、今から考えれば当然不足しており、事例集や活字になった他人の経験を学ぶことで自分の経験不足を補う努力をしてきたつもりですが、“百聞は一見にしかず”というのも事実でしょう。
“経営者としての経験”は、部門長(管理職)としての経験とは異なります。やはり、自分自身で組織を運営してみてわかることばかりです。今、新たに開業するとすればもっと近道を通ることができると思います。
あなたが、開業間もない、年齢の若い税理士への業務依頼を考える場合には、同じ経営課題に今まさに直面している“仲間”としての感覚でアドバイスを受けることはできるかもしれませんが、“知識の蓄積の程度”には留意が必要でしょうし、既に述べたような“専門家としての経験”や“経営者としての経験”を高いレベルで期待することは難しいかもしれません。
一方、現在の会計事務所業界の変化は早く、IT対応から逃げることはできません。
また、会計ルールや税法改正の頻度や深度は大きく、業務品質を確保するには相当の努力が必要な状況ですので、高齢の方には、正直かなり過酷な状況だと思います。
何歳の税理士を選んだらよいのか?
さて、それでは、何歳の税理士を選んだらよいのでしょうか?
所長・代表の税理士が40代~50代であれば一般に十分な経験があり、一方で、ITや税制改正への柔軟性もお持ちでしょう。
しかし、小規模な会計事務所でない限り所長・代表税理士自身が日常の顧問業務の全部を担当することはできないでしょうから、担当スタッフも含めて、どのようなサービスが提供されるかで総合的に判断した方がよいでしょう。
所長・代表の税理士がいかに素晴らしい先生でも実質的に面談が難しかったり、緊急の場合に直接対応してもらえないような体制であれば、担当者のみの知識や経験で判断すべきでしょう。
担当スタッフが3年以上の実務経験を持っており、所長税理士にも随時面談の機会があり、必要に応じていつでも遠慮せず電話やメールや緊急の面談ができる体制がベストだと思いますが、担当スタッフが未熟な場合には、経験のある上司や所長・代表税理士とチームでサービス提供する体制になっている必要があります。
ポイントは、会計事務所全体でどのような体制で提供されるサービスなので、業務依頼の際には、サービス体制についてしっかり確認すべきだと思います。
【初回面談で聞くべき会計事務所の選びの魔法の質問】
- 「ご自身で何度ぐらい事業融資(住宅ローン以外という意味です)を受けたことはありますか?」
- 「ご自身で従業員を採用されたご経験はありますか?」
- 「今までご自身で何度ぐらい税務調査に立ち会われたことがありますか?事前予告のない調査や査察対応、滞納処分の対応経験はお持ちですか?」
- 「顧問業務では先生ご自身が関与して頂けるのですか?担当の方はつきますか?1名専属制ですか?チーム制ですか?」
- 「顧問契約させて頂いた場合、先生ご自身は、年間何回ぐらい面談できると考えたらよいですか?また、税務調査には先生ご自身に立ち会って頂けるのですか?」
- 「今まで、伺った関与体制は、先生の事務所が拡大した場合でも、変わりませんか?」
(税理士法人青山パートナーズ 統括代表社員・公認会計士・税理士 馳 雅樹)